弟はダウン症。僕が考えるダウン症の中絶について

   

出生前診断から中絶に至るまで

今まで考えたことがなかったのですが、妊婦さんが出生前診断で「ダウン症」の可能性があると97%が中絶するというデータを見て、何かを伝えたくなったので書きます。いろいろ調べてみると、妊娠して3〜4ヶ月で羊水検査を受けて「ダウン症」の可能性に気づいたり、出生前診断で気づくことが多いようです。出生前診断を受けるには条件があり、「年齢が35歳以上の人」「ダウン症を妊娠・出産したことがある人」または「染色体異常の可能性がある人」しか受けられないと書かれていました。そこで、一体なにが「ダウン症」を中絶する原因なのか考えてみました。

絶対生きられないとわかったとき

例えば、ダウン症には合併症がよくあるので、胎児の状態で「肺が無い」とか「内臓が揃っていない」など物理的に生きられない可能性が高い場合は、中絶を選択する理由になると思います。実際、僕もそんな状況だと「妊婦さんの命」の方が大事なので中絶を選択すると思います。でも中絶って、一生後悔するらしいですね…

ダウン症が「わからない」とき

二つ目の理由にあげられるのは、これかなと思います。「ダウン症って、なに?」「病気?症状?」など、とりあえずわからない状況のなか、周囲か「大変だよ」「やめときな」と言われること。これについては、ちゃんと「ダウン症」についてわかった上で判断してもらえると嬉しいです。

僕には3つ下のダウン症の弟がいます。

弟の子育ては、母がしてくれていたので「ダウン症児の育て方」については母に聞く方が早いです。実際、僕も間近でみてきたわけなので「大変さ」や「もどかしさ」、「辛さ」というのは多少なりとわかっているつもりですが。でもトータルで考えてみると、弟がダウン症じゃなかったら今の自分は絶対にいないと思いますし、母もあんなに強く生きていないと思います。それだけ、家族にとって「大きな存在」です。

僕が弟を大事にしたいと思ったきっかけ

母はたくさん悩んだと思います。僕に愛情を注ぐべきか、弟にずっと構うべきか。母が選んだのは、「僕に愛情を注ぐこと」でした。でも、僕が選んだのは、母に、「弟に構ってもらうこと」でした。きっかけは、僕が小学生のときに弟と二人で留守番をしていたときです。弟がめちゃくちゃ泣いて、当時の僕は、「うるさいなぁ」と思い、母に電話をかけました。「(弟が)泣き止まないんだけど!」と言いながらイラだっていた僕は、近くにあったブリキのおもちゃを手にとって弟に投げつけてしまいました。それが、まさかの弟の頭に命中してしまい、出血してしまったのです。頭から血が出ている弟を抱きしめながら僕は頭が真っ白でした。「なんてことをしてしまったんだ」。結局、母が急いで帰ってきてくれてすぐに病院へ連れていき、何針か縫って弟は帰ってきました。この経験がおそらく、僕が怒った時に「人や物」に当たらなくなった理由だと思います。

母が教えてくれた「ダウン症」のこと

母があるとき、教えてくれました。「(弟は)生まれた時にお医者さんに、『もって10年かな』と言われてん。」と。ダウン症の方の中には、合併症があることが多いと先ほども書きましたが、実際に弟も先天性巨大結腸症で、生まれてすぐに緊急手術をしました。「(弟は)10歳までしか生きられないの?」という不安や死への恐怖など色々な感情を超えた先には、「弟と一緒にたくさん楽しい時間を過ごそう!」ということでした。これを心に決めてから20年近くなる今でもずっと心にあります。

ダウン症の子は純粋?

よく、「ダウン症は天使だ」とか「ダウン症の子は純粋だ」とか聞いたことがあると思います。実際に、親なら我が子がダウン症でなくても「天使」だし「純粋」だと思いますが、面白いことに「ダウン症の方にご本人とったアンケート」の結果で「今の人生が幸せだ」と答えた人はなんと90%を超えたそうです。今の社会人に同じアンケートをとると、結果はどうでしょうか。ダウン症の方が「純粋」というのはうなずけます。僕も23歳になった弟と今でも仲良しですし、大好きです。きっと弟もそのはず・・・笑

なにが言いたいかと言うと

・ダウン症の家族がいると、こっちまで「幸せ」になる。

・大人になった今でもずっと「仲良し」でいられる。

・家族の気持ちが強くなる。

さらっとすごいこと言うと、僕は幼少期の頃、弟が自分の口で「トイレにいきたい」とか「お腹が空いた」とか言えなかったので、「仕草」とか「表情」とか「行動パターン」を無意識のうちに分析して、“それがわかる” ようになっていました。その感覚を、友達とか先輩とかにも常に持っていて、「今のこの言葉、こいつ傷ついたな」とか「やば、後ろから先輩みてるから怒るつもりだな」みたいなことが肌感覚でわかります。これも弟のおかげですね。

僕は、ダウン症の弟のおかげで「家族を大事に」できるようになりましたし、「経営者」になることもできました。もちろんそれが全てではありませんが、こうして「自分の考え」をもって主体的に生きることができるようになったのは事実です。だから弟にはとても感謝しています。こんなことを書いていると、また弟が大好きな「からあげ」を食べに連れていってあげたいと思ってきました。笑

最後に

ダウン症だから、中絶しようか悩んでいるあなた、「中絶をしたあとの後悔」「ダウン症が持っている力」も考慮して決めてくださいね。産後10年は大変かもしれないですが、その後の人生はきっと素晴らしい道につながっていると思いますよ。


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